1817年にロンドンのJames Parkinsonにより初めて報告された疾患です.動きが鈍くなる,手が震える,体が硬くなるなどの症状が現れます.根本的な治療はまだありませんが,症状を改善する治療が行われます.
日本人では,年間10万人当たり10.2〜18.4人の方が発病しています.65歳以上に限れば,約1.3%の方がパーキンソン病に罹患しています.好発年齢は,55歳〜70歳ですが,20代から幅広い年齢で発症します.多くは家族歴がありませんが,一部は遺伝性であり家族歴をみとめます.
運動症状が出現する何年も前から,便秘,REM睡眠行動障害,気分障害,嗅覚障害等を認める方がおられます.
初発症状として,手のふるえ (約50%),上肢の使いにくさ (約20%),歩行障害 (約30%)を認めます.
運動症状では,安静時振戦,固縮,寡動・無動,姿勢反射障害などをみとますが,最も重要なのは寡動・無動,すなわち体の動きが鈍いことです.
自律神経症状:便秘,起立性低血圧,異常発汗,排尿障害,流涎など
精神症状:不安,抑うつ,無感情,興味・快感喪失,認知障害,幻覚,妄想など
姿勢障害:ななめ徴候,腰折れ,首下がり,前かがみなど
その他:痛み,疲労,睡眠障害,レミ睡眠行動異常,嗅覚低下など
合併症:転倒による骨折,誤嚥による肺炎・窒息,尿路感染,血栓塞栓症,認知症など.
*20年の経過で,約20%の方が認知症を発症するとされており,「認知症を伴うパーキンソン病」と診断されます.
現時点で特定のバイオマーカーは同定されていません.
嗅覚テスト,複合錯覚などの検査を用いたパーキンソン症候群との鑑別に用いられます.
頭部MRI:明らかな異常がなく,その他の疾患 (パーッ金損症候群) を除外することが重要です.
MIBG心筋シンチグラフィー:交感神経の障害を反映し早期より取込低下がみとめられます.
脳血流シンチグラフィー:後頭葉での血流低下が特徴的です.
DAT-SPECT:シナプス前神経におけるドパミントランスポーターの減少・左右差の有無を調べます.
Hoen-Yahr分類:病態によって5段階に分類して評価します.Yahr分類3度以上になると,難病医療助成制度の適応となります.
基本的には不足したドパミンを補充することが治療の中心となります.多種類の薬剤があるため,その選択が作用・副作用両面において重要です.
副作用として,ウェアリングオフ,オンオフ,ジスキネジアなどの運動合併症や,幻覚,浮腫,衝動制御障害などの副作用があります.
カフェインの摂取が症状の改善に有効であった報告例があります.
太極拳,自転車こぎ,音楽療法,絵画療法,短期集中リハビリテーションがお薬と同等の効果とする報告もあり,非常に有用ですので,日々の運動や体操を心がけてください.
深部脳刺激療法:ウェアリングオフ,ジスキネジアの改善に有効例があります.
デュオドパ:腸管にL-Dopaを持続注入する治療です.専門施設での入院が必要です.
*広島市では,広島市民病院,広島大学病院などで行っております.
MRGFUS:難治性の振戦に対して,MRガイド下で超音波集束療法を行います.
*近隣では,岡山旭東病院にて行っております.
痛み,抑うつ,便秘など,運動症状以外に対する治療も重要です.
iPS細胞を用いた移植療法,MRガイド下集束超音波療法などが現在治験中です.
難病医療助成制度,身体障害者手帳,介護保険,障害年金制度などにより,パーキンソン病との生活を支えます.
個々人によって異なりますが,約20年をかけてゆっくりと進行します.一般に,ふるえが目立つほうが,歩行障害が目立つ方より進行は緩徐です.
一般に,若年発症の方のほうが,中年以降で発症した方より進行は緩徐ですが,残念ながら,長期経過によって車椅子生活,寝たきりとなることが多いです.
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