片頭痛とは?
日本頭痛学会認定 頭痛専門医・指導医
慢性頭痛の診療ガイドライン 編集委員会委員
診断:国際頭痛分類第3版(ICHD-III)
日本頭痛学会・慢性頭痛の診療ガイドライン2013
片頭痛の特徴
・女性に多い頭痛で,母親から娘へ引き継がれる傾向があります.
・市販の鎮痛薬で改善する方から,薬の効果がない重症の方までおられます.
・幼児から高齢者まで,幅広い年代の方にみとめられます.
・様々な共存症(抑うつ,パニック障害,めまい,脳梗塞など)が知られています.
・一生にわたる問題(life disease)としてとらえ,慢性化させないことが重要です.
慢性片頭痛の特徴
・一部の片頭痛の方は慢性化し,ほぼ毎日頭痛が続くようになります.
・薬の内服が多い,頭痛発作が多い方は,慢性化のリスクが高まります.
・典型的な片頭痛発作は少なくなり,緊張型頭痛のような頭痛が中心となります.
・閉経前に増悪することが多く,家族歴を有することが多いです.
・なによりも慢性化させない(うつや不眠も同時に防ぐ)ことが重要になります.
小児の片頭痛の特徴
・小児の片頭痛は,頭痛の持続時間が短い,両側の頭痛が多い傾向があります.
・幼児でも片頭痛は存在し,小学校低学年では男児に多い傾向あります.
・幼少期に,原因不明の腹痛,めまい,嘔吐など繰り返すことがあります.
・発症時から連日性の頭痛となる方もおられ,現状では治療に難渋します.
・不登校の原因となるため,精神的な問題との鑑別が困難な場合が多いです.
・頭が痛くて学校に行けなくても,すぐに精神的な問題として片付けないでください.
小児の慢性連日性頭痛とは(日本頭痛協会)
疫学
・日本では,15才以上の8.4%,すなわち840万人の患者さんがおられます.
・男性(3.6%)と比較し,女性(12.9%)に多い疾患です.
・前兆のある片頭痛(2.6%)よりも,前兆のない片頭痛(5.8%)発作が多いです.
・30歳台女性に最も多く,5人に1人が片頭痛もちです.
・70歳以上の方でも片頭痛もちの方はおられます.
症状
・誘因:ストレス,生理,天候の変化,睡眠不足・過多,におい,空腹,運動など
・予兆:一側の肩こり,あくび,過食,疲労感,抑うつ,集中力低下など
・前兆:ギザギザした画車状の光が広がるなど,頭痛に先行して出現
・一側の頭痛(60%)./両側の頭痛(40%),拍動性頭痛(50%)/非拍動性頭痛(50%)
・嘔気/嘔吐(67%),動くと増悪(じっとしていたい; 84%)
・光過敏(暗い部屋を好む; 41%),音過敏(静かな場所を好む; 59%)
・におい過敏(香水など避けたい; 35%):日本人では多い傾向
病態機序
・血管説,セロトニン説,神経説,三叉神経血管説
・Genarator:中枢起源説(視床下部,脳幹),末梢起源説(頭蓋外血管,神経)
・その他:ミトコンドリア説,systemic vasculopathy説など
診断
・国際頭痛分類第3版に基づいて行われます.
・MRI:症候性片頭痛(様頭痛)の除外,増悪因子(副鼻腔炎など)の確認のため
・血液検査,脳脊髄液検査など:成人の片頭痛では基本的に異常はありません.
急性期治療
・市販薬:薬物乱用頭痛防止のため適切な内服指導
・解熱鎮痛薬:強さや持続時間による使い分け,適切な内服指導
・トリプタン製剤の内服:5種類あるトリプタンの使い分け,適切な内服指導
・トリプタン製剤の有効率:60-65%(クリニカルトライアルの結果から)
・イミグラン在宅自己注射の指導
・レイボー:新規の急性期治療薬.
・片頭痛重積発作:イミグラン皮下注,ステロイド・マグネシウム・制吐剤の点滴
・妊娠・授乳中時の片頭痛発作への対応(薬剤の安全性など)
・睡眠をとる,こめかみを抑える・冷やす,コーヒー・紅茶(カフェイン)を飲む
(抗5-HT(1F)作動薬,抗CGRP拮抗薬が海外では承認され使用されています)
予防療法
・予防薬:ロメリジン,アミトリプチリン,プロプラノロール,バルプロ酸など
・予防薬の有効性:約40%(過去の論文報告の結果から)
・サプリメント:マグネシウム,ビタミンB2,コエンザイムQ10,漢方など
・ボトックス療法:海外では主に慢性片頭痛に対して使用
・トピラマート:海外では主に慢性片頭痛,薬物乱用頭痛に使用(保険適応外)
・抗CGRP抗体:エムガルティ,アジョビの2種類が使用可能.毎月1回皮下投与.
・抗CGRP受容体抗体:アイモビーグの1種類が使用可能.毎月1回皮下投与.
・抗CGRP拮抗薬:新たな予防薬.内服薬であり,現在臨床治験中です.
・月経時の片頭痛発作への短期予防療法:解熱鎮痛剤など
・妊娠・授乳中に使用可能な予防薬の選択(胎児への安全性など)
・低用量ピルの適切な使用:前兆のある片頭痛には禁忌!
・生活指導:頭痛体操,規則正しい生活,睡眠,食事,運動,誘因を避ける
予後
・現時点で片頭痛を治癒することは,薬のみでは出来ません.
・一般的に,閉経後に頭痛頻度,程度共に改善する傾向があります.
・純粋月経片頭痛(生理時のみ片頭痛)の方は,閉経後に頭痛は消失します.
・加齢とともに寛解(25-40%),持続(30-45%),進行(20-30%)と報告されています.
・増悪させないためにも,生活指導を中心とする予防療法が重要になります.
(注1:右記の治療は,日本では未承認のため自費診療となります:ステロイド,ボトックス,トピナ,マグネシウム,ビタミンB2,コエンザイムQ10)
(注2:抗CGRP関連抗体は,3割負担の方は,初回投与に約14000〜28000円,2か月目以降の投与に約14000円かかります.)