重症筋無力症は,物が二重に見える,飲み込みが悪い,手足に力が入らないなど,筋力の低下が出現する病気です.また,これらの症状は疲労により出現・悪化するため,朝は良いが夕方になると悪くなる,疲れると症状がひどくなり,急速により症状が改善します.
初期診断が難しく,確定診断まで時間がかかることもありますが,約8割の患者さんに,抗アセチルコリン受容体抗体がみとめられます.
日本では,10万人あたり12人前後の方が罹患しており,約2万人以上の患者さんがおられます.近年では,50歳以上の高齢で発症する患者さんが増加しています.
眼筋型:物が二重に見える,瞼がさがるなど,眼の症状のみが出現します.
全身型:眼の症状に加え,飲み込みにくい,手足に力が入らないなどの症状が出現します.
疲労により増悪するのが特徴で,朝より夕方に悪化する傾向があります.
時に,自発呼吸が障害され,人工呼吸が必要な場合もありますので,注意が必要です.
テンシロンテスト:コリンエステラーゼ阻害剤を投与することにより,症状の改善を確認す検査です.
アイスパックテスト:3分ほど眼瞼を冷却し,眼瞼下垂が改善するか確かめる方法です.
神経伝導検査:反復電気刺激によるwaningの有無を確認する検査です.
アセチルコリン受容体抗体:約8割の方で陽性になる自己抗体です.
MuSK抗体:約1割の方で陽性になる自己抗体です.
LRP4抗体:現在,MGとの関わりが疑われている自己抗体です.
合併症:赤芽球癆,円形脱毛症,低γグロブリン血症,心筋炎,味覚障害など
ELT分類:Early (50歳未満での発症)・Late (50歳以上での発症)・Thymoma (胸腺腫の有無) で分類します.
ステロイドパルス療法:一般的には,ステロイドを1日1〜2時間,3日間連続して投与します.
血液浄化療法:血液中の自己抗体を,医療機器を用いて除去します.
大量免疫グロブリン静注療法:大量の免疫グロブリンを,1日6から8時間かけて,5日間投与します.原則的に入院が必要です.
EFT療法 (Early fast-acting treatment strategy)が基本の治療方針です.以前は多量のステロイドを投与していましたが,この方法により長期予後の改善や副作用の軽減がみとめられました.
少量のステロイドと免疫抑制剤であるプログラフやネオーラルを併用し,悪化時には積極的に急性期療法を行います.
エクリツマブ (ソリリス):血液中の補体(C5)を不活化させます.2週間に1回,約1〜2時間のの点滴を行います.事前に髄膜炎菌に対するワクチン接種が必要です.当院では投与を行っておりません.
エフガルチギモド (ウィフガート):Fc受容体に作用してIgGのリサイクリングを抑制します.1週間間隔で4回点滴静注を行います.当院では投与を行っておりません.
胸腺摘出術:胸腺腫瘍が存在する場合に適応になります.
完全に寛解することは難しく,長期にわたり治療が必要なことが多い疾患です.ただし,加齢とともに,自己抗体は検出されるものの,治療がしで症状が再発せず経過する方もおられます.
比較的軽度の眼瞼下垂が後遺症として残存することが多いですので,生活に支障があるなら,眼瞼挙上術を行う場合もあります.
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