エントランス






アルツハイマー病とは?

日本認知症学会 認知症専門医・指導医
広島県 認知症サポート医

日本神経学会・認知症疾患診療ガイドライン2017

 ・1906年にDr. Alois Alzheimerによって初めて報告されました.
 ・多くは物忘れで始まり,次第に今まで出来たことが出来なくなる病気です.
 ・現時点で治すことはできませんが,様々な面からサポートすることが重要です.


アルツハイマー病の疫学

 ・最近の統計では,日本人の462万人が認知症に罹患しています.
 ・アルツハイマー病は認知症の中で最も多く,約50-60%を占める疾患です.
 ・多くは65歳以上の方に発症し,加齢とともに頻度は増加します.
 ・稀に65歳以下で発症され,一般的に若年型アルツハイマー病と呼ばれます.

アルツハイマー病の原因
 ・多くは遺伝に関係なく発症しますが,APOEε4遺伝子多型にはリスクがあります.
 ・ごく一部の方(0.1%)は家族性アルツハイマー病であり,遺伝子異常が関与します.

 
・Amyloid Cascade仮説:脳にアミロイドが異常に蓄積することが主因
 ・Proteinopathy, Propagation仮説:タンパク異常凝集蓄積の伝搬

 
・危険因子:高血圧,中高年の高コレステロール血症,糖尿病,喫煙など

アルツハイマー病の症状
 ・多くは物忘れで発症しますが,まれに言葉や視覚障害で発症することもあります.
 ・深刻感のなさ,物取られ妄想,その場しのぎの取り繕いなどが見られます.
 ・家事が出来なくなったり,お金の計算や計画を立てることも次第に困難になります.
 ・生活に介助が必要になり,最終的には寝たきりになります.
 ・妄想,暴力,焦燥感,徘徊,性的異常行動などの行動・心理症状も起こります.

アルツハイマー病の診断・検査
 ・物忘れ,実行機能障害などの中核症状の有無が診断の基本となります.
 ・脳MRI:初期には明らかな萎縮は無く,進行とともに明らかとなってきます.
 ・VSRAD:MRIの解析画像.海馬などの萎縮をより早期に検出可能.
 ・脳血流シンチグラフィー:脳委縮が明らかになる前から脳機能低下の検出が可能.
 ・eZIS-SVA, ZSAM:SPECTのデータ解析.後部帯状回や楔前部などの血流低下.
 ・脳脊髄液検査:リン酸化タウの測定.アミロイドβ42の測定は保険適応外.
 ・アミロイド-PET:発症の10年以上前から脳に沈着したアミロイドの検出が可能.
 ・MCIスクリーニング血液検査:ApoA1,C3,TTRの測定によるリスク評価.
 ・ApoE遺伝子血液検査:リスク因子のApoE4の確認.
 (アミロイド-PETは保険が適用されず,また,施行可能な施設も限られます)
 (MCIスクリーニング検査,ApoE4遺伝子検査は自費診療になります)

アルツハイマー病の治療/予防:薬物療法

 ・抗AchE阻害薬:アリセプト,レミニール,イクセロン/リバスタッチ
 ・抗グルタミン酸阻害薬:メマリー
 ・プレタール,アンギオテンシンU阻害薬:現在その有用性が検討されています.

 ・アデゥカヌマブ (ADUHELM):FDAによって承認された抗アミロイドβ抗体.
 ・フェルラ酸:主に米ぬかに含有,フェルガードとして市販されています.
 ・行動・心理症状への対応:状況を判断して鎮静剤などを使用することがあります.
 (薬で治すことはできませんが,病気の進行を遅らせることが報告されています)

アルツハイマー病の治療/予防:非薬物療法

 ・Person-centerd care:その人の立場を最も重視して医療・介護に努めます.
 ・Reality orientation,回想法,音楽療法などの心理療法
 ・囲碁や将棋などの認知行動,定期的な運動
 ・食事療法:地中海食,日本食,緑茶,葉酸摂取,ω3脂肪酸,適量飲酒
 ・高血圧,中高年の高コレステロール血症,糖尿病,喫煙などの是正
 (十分なエビデンスはありませんが,発症予防のためにも日頃から心掛けてください)

アルツハイマー病(AD)の経過:早期発見・早期治療へ向けて

 ・preclinical AD:症状は無いが,アミロイド-PET等で異常を認める時期
 ・MCI due to AD:物忘れなどはあるが,生活に支障が無い時期

 ・AD dementia:生活に支障をみとめアルツハイマー病と診断される時期
 (ADNI-Uなど,より早期に発見し病気の進行を防ぐための研究が進んでいます)